芋の独り言

当ブログへのアクセスは当ブログのプライバシーポリシーに同意したものとみなします.

二重思考の必然性

オーウェルがその害悪性と可能性を見出し,”1984”の核とした, 相反する二つの心理を同時に信奉する心理状態である<二重思考>.

1984”ではBig Brotherを信奉するために洗脳的に党員が身につけ普及させていた. 二重思考は悪用されれば独裁者の誕生や政治の腐敗をもたらす.

しかし,二重思考は我々が元々備え持っているものであり,世界の真理でもある. 本の解説にもあるように観測されるまではこの中の猫は生きている状態と死んでいる状態の両方の状態にあるという”シュレーディンガーの猫”は 二重思考の発想であり, この世界において宇宙というものは限りなく大きいがそれを構成するもの(素粒子など)は限りなく小さいという世界の真理は二重思考的であり, ”鋼の錬金術師”において登場する”全は一,一は全”もまた同じように無限ループする矛盾を抱えた二重思考的な発想であろう.

我々の脳においてもそうだろう. 単純なもので言うと,視床下部には摂食中枢と満腹中枢の相反するような機能があり, そのバランスが保たれていることで生きることができている. どちらか一方に偏っている状態は飢餓状態であったり拒食症といった病気の状態である可能性がある. 我々の身体は二重思考的な機能のバランスを状況に応じて調整することで維持されている.

以上が根拠として適切かは分からないが,二重思考は必然的に存在するもので, 通常我々はそれを意識せずにバランスを保って生きている. ヒト種に対し,ヒト種は愚かで醜く呪われた地球内生命であるため嫌悪感を抱くが,同時にユーモアさや美しさに魅了され好意も抱く. そういった二重思考もまた承認欲求と同じように誰しも持つものなのだ.

二重思考が必然的に誰しも持つものならば, 誰しも生まれながらにして知的生命体は相反するものも含めてあらゆる感情を持っているはずだ. そしてそれはどんなことがあっても失われることはない. 感情が表面上顕在化していなくとも,脳の高次機能が機能している限り根底には様々な感情が眠っている. ただ,感情のバランスが釣り合っていないだけなのだ. つまりは基本的な感情(喜怒哀楽)に対するパラメータが異常に低いというだけなのだ. ゲイジの例が有名な人格変化に関しても感情のパラメータのバランスが異常になってしまったことによる影響と考えられる.

最適な感情のバランスは個々によって異なり, そのことをお互いに理解し尊重した上で接しなければ,それが争いにもつながってしまう. もしくは他を洗脳し圧倒する独裁者的な輩も現れてしまうことになる. ヒト種の愚かさはそのことを過去から学ばず,歴史で何度も繰り返し善なる民の生命を奪い,今なお繰り返そうとしている点にある. 痛みによる教訓でもってしても理解せずに悲劇を繰り返すにヒト種が現れ,地球上のすべての種を虐殺してしまう.

オーウェルが恐れたディストピアが実現しないことを祈る. そして,我々は, 誰しも二重思考は持っており,それを失くすのではなく,個々に最適なバランスを保ち,それを他人と理解・尊重・協調することを 知っておかねばならないだろう. 醜く争うのはもう止めにしよう.